Formlabs Form3を買った

 トレジャーフェスタ・オンライン9は無事に終了しました。
 沢山のお買い上げありがとうございます。

 ご購入いただいた商品は、トレジャーフェスタ・オンライン実行委員会宛に発送したので、順次発送されると思います。
 商品の到着まで今暫くお待ち下さい。

 TFOとは無関係に、中古品のFormlabs Form3を購入しました。

 Form3は私が2017年4月の購入以来、作品製作に使っているFormlabsの光造形機、Form2の後継機です。

 Form2を5年間使った感想としては、

■レジンカートリッジによるレジンの自動投入。

■レジンタンクを出力に最適な温度に保つヒーター機能。

■レジンタンクの露光面を攫って整えつつレジンを攪拌するワイパー機能。

■高性能でメーカー推奨使用期限を年単で超過しても問題無く出力出来、出力品に例年劣化による割れも起らない高性能なFormlabs純正レジン。

■環境さえ整っていれば確実に出力する安定性。

と言う具合に、製品によっては出力が運任せになる事もある光造形機の中では、Form2は極めて安定した出力が行える製品です。

 私の使っているFormlabs純正レジン、グレーV4レジンカートリッジは、低価格製品向けのレジンと比べれると容量単価は高価ですが、他のメーカーの似た様な価格帯のレジンでも開封して数週間で目に見えて状態が変化して劣化して行くのに対して、グレーV4レジンカートリッジは、メーカーが推奨する消費期限とは無関係に、レジンタンクに入れっぱなしで1年放置しても、問題無く出力出来る(5年間放置していても出力した実績有り)くらい劣化しないので、使い切れなかったレジンが無駄になる事もなく、イベントが定期的に開催されても3~6カ月程度の間隔でしか出力しない私には最適でした。

 試行錯誤で時間や消耗品を無駄に消費する事も無く、出力が常に予定通り行えるForm2には非常に満足ていたので、後継機となるForm3への私の期待は大きく、発表当日にブログに記事を掲載したくらいです。
 Form3の予約受付開始直後に、日本国内の販売店に何件か問い合わせて、返事が一番早かった所で予約して、入金までしたものの、販売された直後のForm3を先して入手したユーザーの出力結果はForm2に比べて大きく劣る物でした。Form3を予約していた販売店に問い合わせてみた所、販売店もForm3の出力品質の低さを認識して、Form3の予約キャンセルと全額返金が販売店から提案されたので、私は提案に応じてForm3の注文をキャンセルして、Form2を使い続けました。

 その後、Form3はファームウェアやパソコンソフトのPreFormのアップデートと、新たに発売された改良型レジンタンクにより、大幅に出力結果が向上して、Form2を超える様になったとの事です。

 Form3発表時に投稿したブログの記事の後半でも触れていた様に、消費者の手に届くForm3がその性能を発揮するまでには、かなり時間が掛かった様です。

 Formlabsの現行の光造形機は2022年1月に発売されたForm3+となっていて、Form3は一つ前のモデルとなります。

 Fromlabs公式サイトではForm3とForm3+の違いを説明するページはあるのですが、具体的に何がどう変わったのか、私には良く分かりませんでした。

 PR TIMES 2022年1月5日の記事の説明でも、当初はレーザーモジュールがハード的に変更されたかの様な報じ方でしたが、後から、ソフト的な変更に訂正されていました。

 Form3Form3+とでは、ソフト的な改良だけでなく、ハード的な違いもあるそうなのですが、Form1に対するForm1+ほどの大きな変更があるのかどうかは良く分かりません。

 Form3+は3年保証で100万円を超える(2年保証でも94万円近くする)、私にとっては高値の華でしたが、手の届く金額でのForm3の中古品の出物があったので、メーカー送りでの修理を前提に購入してみました。

 2022年12月30日追記

 Form3+の発表時に行ったツイートで、Formlabsの国内正規代理店YOKOITO CEO 中島祐太郎さんにリプライを貰っていました。

 どうやらForm3は2021年からハード的に徐々に変化していたそうです。
 製造時期によっては、名前が違うだけでForm3+と同等のForm3も存在するのかも知れないですね。

Formlabs製品を中古購入する時の注意点

 私が中古のFormlabs製品を購入する時の絶対条件は、本体を収める外箱と中の緩衝材が付属している事です。
 今回、私が購入したForm3も外箱と緩衝材が付属していました。

 光造形機は複雑な精密機器なので、輸送には外箱に入れないと安全に輸送できません。
 Formlabs製品を調整や修理をしてもらう為に、国内の販売店に送る場合でも、外箱が必ず必要となります。

 外箱と梱包材が手元にない状態で、Form2やForm3、Form3+の調整や修理が必要になった場合、外箱を入手する事から始めないとまりません。

 外箱を購入する場合、費用も時間もかなりかかるみたいなので、外箱が無い中古品を買う場合、それを差し引いて考える必要があります。

 DIYで修理して使う場合は、この限りではありません。

中古購入したForm3の稼働時間

 Form3は使用時間が確認できるので、確認してみた所、5d8hと表示されてました。
 5日と8時間と言う事だと思うので、それ程使われていない個体だった様です。

Form3のクリーニング

 外観のレジンによる汚れ具合から、かなり使い込まれている感じがしたのですが、エタノールが含まれているウエットティッシュで汚れを拭き取ったら、傷らしい傷ははなかったので、前オーナーは光造形機の取り扱いに不慣れとかで、Form3本体に意図せず付着させてしまったレジンの拭き取りを全くしてなかっただけの様でした。

 完全に硬化する前のレジンは、IPA(イソプルピルアルコール)を含ませたウエスやティッシュでは微妙にベタ付きが残りますが、エタノールを含んだウェットティッシュならベタ付きも拭き取る事が出来ます。
 無水エタノールキムワイプウエスに含ませて拭き取りに使うのも良いでしょう。
 アクリル樹脂や塗装はエタノールに弱いので、高濃度のエタノールを使って拭き取り過ぎると、アクリル部品が割れたり、塗料が溶け落ちたりするので、やり過ぎは禁物です。

 付着して完全に硬化したレジンはエタノールでの拭き取りは簡単にはきなくなりますが、ベト付きは無くなります。実用上はこれで充分な事が殆どです。
 完全硬化したレジンは、ヤスリやスクレーパーを使えば手早く削り落とす事は難しくはないのですが、付着した面を痛める事にもなるので、あまりお勧めはしません。
 

Form3 レジンタンク V2.1

 私が購入したForm3には未使用のレジンタンクが付属していました。

 付属していたレジンタンクは2022年12月時点では最新型のV2.1でした。

 Form3レジンタンクは、保管用のケースに収められているのを差し引いても、ビルドプラットフォームと比較するとかなり大型です。

Form3用メタルラック

 Form3を収納するのに、Form2と同様に、コーナンで売られている部品を使ってメタルラックを作りました。

 棚板はForm2よりも大型の49.5 X 39.5cm使いました。
 網状の棚板ではゴム足の小さなForm2やForm3は設置できないので、角を切り落とした2.5mm厚のFDM板を敷いています。

  Form3の重量は17.5kgとForm2の12kgに対してかなり重くなっています。

中古購入したForm3の出力テスト

 出力テストで動作確認中のForm3
 画面から見て左側のゴム足が空回りするので、5.5mm厚の板をスペーサーとして入れて水平調整しました。

Form3とForm2の出力比較

 購入したForm3に付属していた未使用のレジンタンクと、Form2で使っていたグレーV4レジンカートリッジを使って、Formlabsが配布しているテストファイルを出力してみました。
 
 購入したForm3の中古品は、レジンの汚れと、ゴム足一つの空回りは有った物の、動作には問題無さそうです。

 こちらは今まで使っていたForm2テストファイルを出力した物。

 写真は撮影条件が違い過ぎて、比較するのは難しいですが、実際のぱっと見ではForm2Form3での違いは分かりませんでした。

Form2とForm3の違い

 Form2からForm3への大きな変更点は。

 (1) 温度維持方法がForm2では電熱ヒーターでレジンタンクを温める方式から、Form3では熱風ヒーターで出力エリア全体を温める方式になった。その分消費電力が増えた。

 (2) Form2では二軸のガルバノミラーで平面を描く方法から、Form3ではガルバノミラーは前後方向の一軸のみで、横方向はレーザーユニット全体が移動する方式に改められた。

 (3) Form2で剛性のあるレジンタンクをガラス面で支えていたが、Form3では柔らかいレジンタンクを底を左右に移動するレーザーユニットにより少し押し上げられてビルドプラットフォームに密着する方法に改められた。

 (4)Form2ではレジンタンクのワイパーは本体側に取り付ける方式だったのが、Form3ではレジンタンク内に収めて本側の磁石で移動させる方式に改めらた。又、レジンがワイパー動作で溢れるのを防ぐ構造になり、レジンタンクを収める容器も付属した。

の4点だと思います。

 (1)に付いては、Form2の使用環境として指定されている室温は、摂氏25度±5度です。寒い地域ではかなり厳しい要求だと思いますが、摂氏20度以下の室温では出力が上手く行かない事が多いそうです。
 Form3では温風で内部全体を温める事で、摂氏20度よりも低い室温でもForm2よりは出力出来る様になっているのだと想像します。
 
 (2)に付いては、レーザーカッターと同様に、レーザーユニット自体が前後左右に移動する方が、常にレーザー光が垂直に露光面に当るので、出力だけを考えると光造形機としては最適な方法です。
 光造形機は何百、何千と言う層を積み重ねて造形する事を考えると、レーザーカッターとは比較にならない程、レーザーユニットを動かす必要があるので、機械的には大変なので、Form2までは入射角の変化を許容して、2軸のモーターに鏡を取り付けてレーザーで軌跡を描く方式を採用していました。ビルドプラットフォームの端に行くほどレーザーは斜めに照射されるので、造形が甘くなってしまう欠点はあるものの、小型化、軽量化や、耐久性の面では有効な方法とされています。
 Form3では前後軸をミラーでレーザーを誘導して、左右軸はレザーユニット全体を制御する方法で軌跡を描く方式になりました。ミラー形状の工夫で、露光面に対してはレーザーが常に垂直に照射できる様になっているので、ビルドプラットフォームの端側の造形が劣る事はなくなりました。但し、左右幅はモーターと軸を収める都合上、大型化して、重量も全体で5.5kg程増加しました。
 Form3はForm2に比べて、耐久性が特に劣ると言う話は聞かないので、耐久性を考慮して設計、製造されているのだと思います。

 (3)に付いては、造形面では有利な方式だとFormlabsは謳っています。
 初期のForm3用レジンタンクでは、製造上の不備でレジンタンクからレジンが零れ出すトラブルが何件か報告されていました。
 レジンタンクがV2.1になってからのレジン漏れの報告がネットには上がってこないので、何かしらの対策が行われた様です。

 (4)に付いては、レジンタンクの着脱や保管がForm2にくらべてずっとし易くなりました。
 ワイパー動作によるレジン漏れに付いては、私が使ったForm2では経験が無いのですが、安心感はあります。
 
 Form2とForm3の違いは、テストファイルを出力しただけの今の段階では、今の所体感出来ていません。

 私の場合は偶々タイミングが良くForm3の中古品を入手しましたが、Form2が問題無く利用できているのであれば、3年保証で100万円を超えるForm3+を購入する必要は無い様に思えます。

2件のピンバック

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