エアーブラシの空気圧をスライドボリュームで制御

 「電空レギュレータをエアブラシに使ってみた」で紹介したSMCの電空レギュレータをスライドボリュームスイッチやスイッチで制御できるコントローラーを作りました。

 入手できた電空レギュレータは0~5Vの電圧で制御できる物ですが、中古品や新古品では、4~20mAの電流で制御する物が多く出回っているので、それらを使う場合は、0~20mAの電流を出力出来る機器を使うのが良さそうです。

 電空レギュレーターからかはモニター用の電圧や電流が出力されているので、ArduinoやM5Stack等のマイコンボードで制御したり、表示したりするのに使えそうです。
 電空レギュレーターで空気圧圧力を制御するだけなら、電子制御は必要ないのと、プログラムで制御するのは手間の割に恩恵が小さそうだったので、今回の電空レギュレーターは、真空脱泡機の様にArduinoやM5Stackを制御に使わず、抵抗やスイッチの組合せで電気信号を制御する事にしました。

 スライドボリュームスイッチ(ポテンショメーターとも呼ばれる様です)は、移動量が大きい方が微調整がし易そうだと思ったので、AliExpressで見つけた範囲では移動量がもっとも大きい、移動量100mmのスライドボリュームスイッチをAliExpressで購入しました(注文から到着まで4週間くらい掛かりました)。
 購入したスライドボリュームスイッチをテストしてみた所、100mm幅は移動量が大き過ぎるのと、スライドの動きが軽く意図せず動かしかねない不安定さがあり、抵抗の変化は音響機器で良く使われている指数関数的なAカーブ(サウンドハウスのサイトで説明されています。)なので圧力調整には不向き。と言う具合だったので、他の物を探す事にしました。

 AliExpressで購入したボリュームスイッチの使い辛さを受けて、スライドの移動量が60mm、抵抗の変化量は直線的なBカーブ、ツマミ部分はAliExpresで購入したボリュームスイッチが流用出来る仕様の、ALPSのボリュームスイッチをマルツで購入しました。
 届いた物をテストした結果、スライドの動きの重さを含めて、全て希望通りで、満足する物でした。
 移動量が60mmの物を使ってみた感じでは、移動量がもう少し小さくても微調整は問題無さそうなので、一般的な移動量45mmのボリュームスイッチでも良さそうですが、移動量60mmのボリュームスイッチの操作性は自分の好みにはぴったりでした。

 ボリュームスイッチのスリットや、ロッカースイッチの取用の角穴は超音波カッターで開けました。
 位置決めと穴開けを適当に行ったので、やや傾いてしまいましたが、実用には問題無いでしょう。

 美観に拘るのであれば、穴は予めしっかりと位置決めしてボール盤であけるのが良いでしょう。
 角穴の場合、角の隅の内側をボール盤で穴開けしてから、超音波カッターや糸鋸で穴を繋げて穴開けすると良いのだと思います。

 スライドボリュームスイッチと組み合わせる抵抗を、ロータリースイッチで切り替え、設定できる圧力の上限を変更出来るようにしました。
 写真は最初に届いたスライドボリュームと、あり合わせの部品で実証試験中に撮影した写真です。
 緑のテープを貼っているのが、間に抵抗を取り付けた導線です。

 ロータリースイッチはAliExpessと秋月電子商会で購入した物を試しました。
 秋月で税抜150円で販売されている物の方が、切り替え時の感触が良く、回転ノブの形状も良く、端子も結線し易い形状だったので、こちらを採用しました。

 ノブは秋月電子通商で単品売りされていて、汎用的に使える様です。

 AliExpressで3P4T(「3極4位置」や「3回路4接点」の意)のロータリースイッチを注文したら、4P3Tの物が間違って届きました。

 AliExpressでは商品が間違って届く事は良くあり、Open Disputeから証拠写真を提示して返金を求めると、すぐに返品無しで全額返金の措置が受けられました。

 当初は抵抗の切り替えはローターリースイッチのみで行う予定でしたが、秋月電子通商では3P4Tのロータリースイッチは扱っておらず、スライドボリュームを使わず抵抗のみで0.6MPa程度の圧力にするのは、別のスイッチにした方が便利そうなので、4P3Tのロータリースイッチと、3P2Tのトグルスイッチの組合せを使う事にしました。
 3P2Tのスイッチはロッカースイッチが良かったのですが、3回路の切り替えを同時に行う必要があり、3回路以上の同時切り替えにに対応しているスイッチが探した範囲ではトグルスイッチとロータリースイッチしか見つからなかったので、トグルスイッチで妥協しました。

 右下のロッカースイッチは電空レギュレータの電源スイッチ、その隣のLEDはパイロットランプです。
 電空レギュレーターの電源を切っても、圧力は概ね維持されます。

 電空レギュレーターの出口側には圧力表示用にSMC ISE30-01-25 MLを取り付けています。

 スライドボリュームで制御する圧力の上限は、コンプレッサーとフィルター類の性能を勘案して、0.6MPa程度と、0.25MPa程度、0.05MPa程度になる様に、抵抗を組み合わせました。
 エアーブラシ塗装では一番使用頻度の高いエアーブラシ、タミヤ HGトリガーエアーブラシ (カップ一体型)で扱い易い圧力を探ってみた所、上限は0.58MPa程度にするのが良さそうなので0.58MPa程度になる様に電空レギュレータ側で上限を設定した所、ロータリースイッチでの圧力設定は0.58MPa程度、0.24MPa程度、0.47MPa程度となりました。

 トグルスイッチは、スライドボリュームのノブの位置に関わらず、0.6MPa程度になる様に、スライドボリュームからは切り離した別回路で電空レギュレータに繋がる様になっています。
 通電時に電空レギュレータが0.6MPa程度に設定される様に抵抗を選びました。電空レギュレーター側での調整後は0.58MPaとなりました。

 電空レギュレータに電気信号を送る為のスイッチの構成と抵抗を決める為に、何度も試行錯誤を繰り返したので、相当な手間がかかりました。

 スイッチで切り変える配線はかなり複雑になるので、スプレッドシートで表を作って整理しました。
 スプレッドシートで作った回路は、スライドボリュームスイッチをチャンネル毎に設けた場合を想定して表を作っています。

 当初はボリュームスイッチを複数使って、ロータリースイッチで抵抗とボリュームスイッチを切り変えられる様にしたかったのですが、ALPSのスライドボリュームスイッチは2つしか入手できず、同じ物を今後入手できる見込みもないので、スライドボリュームスイッチは一つだけ使い、ロータリースイッチでは抵抗とLEDを切り替える回路としました。
 結果的にコントローラーが良い感じで小型か出来たので、結果には満足しています。

 電空レギュレーターと圧力スイッチはDC24Vで動作するので、制御用の5Vはユニバーサル基板に取り付けた抵抗による分圧で取り出しました。

  DC24VからUSB DC5Vが取り出せるモジュールをAliExpressで購入したのですが、こちらは5Vを僅かに下回るので調整が面倒なのと、基板とUSBケーブルは分圧に抵抗を使うよりも場所を取るので、使わずじまいでした。

 LEDの電源を制御信号に使う分割回路用から分岐させると、制御信号の電圧に影響するので、LED用のDC5Vは制御信号とは別に、分圧回路を追加しました。

 電空レギュレーターと圧力スイッチはDC24Vで動作します。イオナイザ付きエアダスターもDC24Vで動作するので、制御装置には、圧力スイッチとイオナサイザー用にDC24V出力用にDCジャックを2つ、これにACアダプター用の入力に1つ、合計3つのDCジャックを取り付けました。
 どのDCジャックにどのプラグを取り付けても通電する構造になっています。

 電空レギュレータは5ピンのDINコネクターで接続する様にしました。
 真空脱泡機で使っている真空スイッチとは異なるピン配置の物(45度と60度)を使ったので、お互いに誤接続しない様になっています。

 回路を収める箱は秋月電子通商で丁度良いサイズの物を購入しました。
 塗料や溶剤で汚れて行くのは目にみえているので、出来れば安価な既製品の箱を使いたいと考えていたので、丁度良いサイズと価格の物でした。

 スライドボリュームを複数取り付けたり、スイッチを増やしたい場合は、タカチ電気工業 TW13-5-13Bを使うと良さそうです。


 電空レギュレータと圧力スイッチ、コントローラーの電源は、ワーサー30D(コンプレッサー)と連動する様に配線しました。
 ワーサー30Dは圧力スイッチにより自動的に止まるので、電源を切り忘れる事か少なくありませんでしたが、電空レギュレータや圧力スイッチ、コントローラーの各種表示で通電状態を一目で確認出来る様になったので、ワーサー30Dの電源を切り忘れを防げる様になりました。
 今考えたら、AC100Vで点灯するランプか何かをワーサー30Dと連動させれば良かったとは思います。

 電空レギュレータのコントローラーは、エアーブラシに使っているフィルター類の上が、使い易く邪魔にならない場所だったので、MDF板と角材で作った固定具で、コントローラーをフィルター類の上にはめ込み固定出来る様にしました。

 固定具の組立固定は木工用ボンドの接着のみで行いました。
 木工用ボンドは、十分に乾燥に乾燥するには、数時間から丸一日程度の乾燥時間が必要ですが、木材同士であれば、破損無く分解するのは不可能な程に、強力に接着出来るので、このくらいのサイズの物であれば、釘やネジを使わずとも十分な強度が得られます。

 自作した固定具は、ネジでミストフィルターに固定しています。ネジ穴の位置は精度が必要だったので、ホーザンのボール盤を使って開けました。後から考えたら、コントローラーの部品を取り付ける穴でもボール盤で穴開けすれば良かったですね。

 テスト動作の範囲では、低圧での塗装には電空レギュレーターのみでは難があるものの、それ以外は問題無い感じでした。

 塗装に使った時の使用感は後日、別の記事で紹介したいと思います。

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