キャストキットを多く作りたいならこの離型剤

ガレージキットを生産する際のレジンキャスト複製には、シリコーン型が壊れにくくなる様に、離型剤を使います。
離型剤を使わず、自作のシリコーン型でレジンキャスト複製品を沢山作ろうとすると、数セット複製するだけで型が壊れてしまう事があります。
素材の置き換えなど、数個しか複製品を作らない用途では、あえて離型剤を使わない事もある様ですが、個人がガレージキットを沢山作りたい場合は、離型剤が欠かせません。離型剤には様々な種類があります。

数ある離型剤の中で、私が使っているのはハイリムーバー94FXⅡです。
ハイリムーバー94FXⅡは模型用の離型剤としては高価ですが、非常に高性能で、一般的なシリコーンスプレーよりも、一つのシリコーン型でより多くの複製品を作る事が出来ます。
普通のシリコーンスプレーと ハイリムーバー94FXⅡどはれくらい違うのか
私が ハイリムーバー94FXⅡを使う様になった実体験を紹介します。
私が初めてガレージキットの複製を行なった時には、以下の材料で複製しました。
何れも雑誌を参考に購入した物です。
■シリコーン型
ボークス 新スーパーEXシリコン
ボークスの新スーパーEXシリコンは既にディーラー活動をされていた方に勧められた物です。
最寄りのボークスの店舗で購入しました。
新スーパーEXシリコンは旭化成ワッカーシリコーンM8012が元となる製品で、ウエーブが ビージェイ ブランドで販売しているBe-J シリコン SG-020や、クレオスが販売するMr.シリコーンと、基本的には同じ物の様です。
銘柄により細かい違いがあるのかもしれませんが、使った感じでは、明確な差がある様には感じられませんでした。

写真は里見デザインで購入した旭化成ワッカーシリコーンM8012
■注型材料
ウェーブ レジンキャストEX 2kg (ノンキシレンアイボリー)
ガレージキットを作るのには一般的な二液性のウレタン樹脂です。
比較的安価で、家電量販店の模型コーナーでも取り扱いがあり、比較的簡単に入手できます。
SB4黒鈴小径がイベントなどで販売しているガレージキットでも、ウエーブのキシレンレスは良く使っていました。

現在SB4黒鈴小径が販売するガレージキットには、真空脱泡で都合の良い、里見デザイン 造形レジンキャストノンキシレン180秒タイプホワイトを使っています。
■離型剤
シリコーンスプレー。
近所のホームセンターで数百円で購入した物で、銘柄は今となっては分かりません。
雑誌ではシリコーンスプレーとしか書かれてなくて、具体的な銘柄は良く分からなかったので、手近に購入できるシリコーンスプレーを離型剤として使用しました。
離型剤として使ったホームセンターで買ったシリコーンスプレー以外は、ガレージキットを個人で自家複製する時に使う物としては、現在でも一般的な物です。
圧力鍋を使った加圧脱泡機や、真空脱泡機は当時はまだ使っていませんでした。
離型剤に、ホームセンターで購入したシリコーンスプレーを使った複製では、10セットを過ぎた頃から成型品がシリコーン型に貼り付くのが感じられ、1セット毎に貼り付きが強くなり、不良品を含めると、25セットも複製できず、イベントで販売出来る製品は十数個しか作れませんでした。
雑誌の記事では、20個くらいは販売用が作れると言った事が書かれていたので、もう少し複製できる数が増やせないかと調べていた所、離型剤に現在の ハイリムーバー94FXⅡに相当するハイリムーバー94FXを使う事を勧めるネット記事を見つけました。
ハイリムーバー94FXは、フッ素系離型剤と呼ばれる物で、ネット通販で購入できる事が分かったので、2度目の複製の離型剤には、ネット通販で購入したハイリムーバー94FXを使いました。
離型剤にハイリムーバー94FXを使って複製した時には、ホームセンターで購入したシリコーンスプレーでは、10セットを超えた時点で感じたシリコーン型への成型品の貼り付きが、20セットを超えても感じられず、注型不良などを含めると30セット以上、展示見本完成品製作用を差し引いて、イベント向けに販売出来る分だと25セット程度が1セットののシリコーン型で作れる様になりました。
シリコーン型の作りが良かったり、複製する原型の形状がシンプルだったりと、良い条件が重なれば、40セット近くの複製も可能でした。
二回目の複製以降、ハイリムーバー94FXがリニューアルして、現在の ハイリムーバー94FXⅡになった現在でも、私は複製用の離型剤として使い続けています。
レジンキャスト複製ではシリコーン型に使うシリコーンの銘柄や、キャスト素材、原型の形状、シリコーン型の作りなど、色々な条件や要因で複製できる個数が大きく変わるのですが、似た様な条件であれば、ホームセンターなどで購入できる安価なシリコーンスプレーを使うよりも、 ハイリムーバー94FXⅡを使った方が、複製できる個数が増やせると思います。
ハイリムーバー94FXⅡ1本で何セットくらい複製できるのか
2~3セット毎に1回のスプレーで充分な効果を得られるとされています。
使用量は型の大きさや数によって大きく変わるものの、今まで作った1/7スケールのガレージキットフィギュアだと、2~3セットごとのスプレーの場合、ハイリムーバー94FXⅡ1本でガレージキットをシリコーン型の寿命となる30セットくらいを生産できる様に思います。
私は、スプレーしていない回数の管理が大変なのと、スプレーせずに複製し続けて型の寿命を縮める事は避けたいので、毎回ハイリムーバー94FXⅡをスプレーしています。その場合、十数セットで1本程度使用するので、余裕を見て10セット1本を目安に購入しています。
ペインタプル 塗装が出来る離型剤
離型剤は油の一種なので、一般的には塗料をはじいてしまう性質があります。
ハイリムーバー94FXⅡは塗料をはじく性質がないので、離型剤を落とす事なく塗装する事ができます。
離型剤が付着していても塗装出来るの、フッ素系離型剤全般の特徴の様です。
イベント向けに急いで展示見本の完成品を作っていた時には、離型剤を落とす作業を省略して、塗装した事がありました。マスキングで下の塗装が剥がれる事もなく、問題無く、塗装完成見本を仕上げる事が出来ました。
キャスト素材にも油分が含まれるのと、工具や手からも塗装する部品に油分が付いてしまうので、塗装前には、塗装する面から油分や汚れを取り除く、脱脂を行なった方が良いと思います。

ガレージキットを塗装する前の脱脂は、レジンキャストキットの脱脂で解説しています。
ハイリムーバー94FXⅡはどこで買えるのか
ハイリムーバー94FXⅡは取り扱っている店が少なく、ネット通販でも取り扱っている店は限られます。
Yahoo!ショッピング
私は、Yahoo!ショッピングの
里見デザインで販売されている物が一番安く、入手性が良いと感じています。
楽天
楽天ではビージェイがハイリムーバー94 FXIIを販売しています。
Amazon.co.jp
2022年1月現在では、アマゾンではハイリムーバー94FXⅡの取り扱いが有りませんでした。
まとめ
普通のシリコーンスプレーと、 ハイリムーバー94FXⅡの違いを表にまとめるとこのような感じです。
離型剤の種類 | 普通のシリコーンスプレー | ハイリムーバー94 FXII |
貼り付き | 10個以降から1セット毎に感じる | 20セットを過ぎたあたりから軽い貼り付きを感じる |
作れる販売用キットの個数 | 20個未満 | 20個以上、条件が良ければ40個も狙える |
価格 | 数百円 | 2,140円 (2022年1月時点での最安値) |
複製出来る個数 | 毎回塗布で十数セット | 毎回塗布で十数セット |
購入できる場所 | 全国各地のホームセンター | 限られた専門店やネット通販店 |
ホームセンターで売られているシリコーンスプレーが数百円程度で購入できるのに対して、 ハイリムーバー94FXⅡは2022年1月現在では、1本2,000円以上するので、離型剤としては高価です。
ただ、シリコーン型を作り直す事を考えると、数個でも複製品が多く作れれば、その方が安上がりになる筈です。
レジンキャスト複製を行なう場合、是非使ってみて下さい。
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