SpyderX Proでカラーマネジメント

 どうもNimbusです。

 ディスプレイの発色をキャリブレーション(校正)するSpyder X Pro SXP100を購入しました。

 3DCGモデリングや写真の編集等は「液晶ペンタブレット WACOM Cintiq 16 を購入」で紹介したワコム Cintiq 16とDell U2413とのデュアルディスプレイを構成して使っているのですが、それぞれのディスプレイで色味が異なるのがちょっとした悩みでした。

 3Dプリンターで出力する為のデータではデータ表示の色味は関係ありません。
 普通のプリンターの印刷物は無調整でのプリンターの仕上がりに満足していましたし、調整する必要があれば現物で確認しつつ調整すれば事足ります。
 写真をWebに掲載する場合、個々の閲覧環境の差が余りにも大きい為、写真の色味や発色に対して強い拘りはありません。

 と言った具合に、2つのディスプレイの色味が異なっていても実用上の不都合はないものの、液晶ペンタブレットのディスプレイととモニターディスプレイとで色が違うのは気になり、ストレスもありました。

 ディスプレイの調整機能で発色を合わせる調整も試みた事は何度もありましたが、毎回全く上手く行かず、どの様に調整して良いか見当も付かない状態でした。

 複数のディスプレイの発色を合わせるカラーマネジメント用機材の存在は知っていたのですが、10年位前は10万円くらいする業務用の物くらいしか無く、自分の用途では高価過ぎるのでそれ程興味も無かったのですが、実売価格で25,000円くらいの安価なモデルが登場しているのを知り、数年来のちょっとした悩みが解消するならと購入してみた次第です。

 ImageVISONのWebサイトによるとSpyder X Proは2019年3月15日に発売された様です。
 2023年10月現在では、上位機種のSpyderX EliteSpuder X2 Eliteにモデルチェンジして、更に上位機種のSpyder X2 Ultraも発売されましたが、最廉価のSpyder X Proはモデルチェンジを受ける事無く現行品の様でした。

 パッケージはシンブルで、本体と、マニュアルやソフトウェアのダウンロード先が記された紙が入っているだけでした。

 使い方はパッケージ同様シンプルで、ダウンロードしてWindows10にインストールしたSypderX Pro用ソフトの指示に従って画面をクリックしつつ、Spyder X Pro本体を画面に取り付け、必要なら手で軽く押さえつけるだけでした。

 ディスプレイを30分間点灯してからキャリブレーションする事が推奨されているので、その待ち時間が調整作業の中で一番長いと思います。

 Windows10だとディスプレイのプロパティにSpyder X Proで色校正したカラープロファイルが追加されます。
 同じようなカラープロファイルが沢山あるのは、Spyder X Proで色々試した為です。

Dell U2413とWindows10 Google Chromeでの問題

 Google ChromeではWindows10のカラープロファイルは適用されない様です。

 Spyder X Pro用ソフトの指示通りにディスプレイの表示設定を色温度6500Kにした場合、Cintiq16では特に問題無かったのですが、Dell U2413のカラープリセットを色温度6500Kに設定した場合、Spyder X Proで色校正される前の状態の彩度が高過ぎて、Spyder X Proで色校正したカラープロファイルが適用される他のソフトと適用されないGoogle Chromeとの乖離が激しく、ChromeもSpyder X Proのカラープロファイルが適用されない限りは実用にならない感じでした。

 上の画像はDell U2413に、Spyuder Proで色校正してない、sRGB IEC61966-2.1のカラープロファイルを適用した状態のキャプチャー画像。
 上の写真はX(旧Twitter)の投稿。下は投稿した画像をWindows10のフォトで表示した物。

 上の写真はDell U2413を色温度6500Kに設定した状態でのSpyder X Proで色校正を行ったカラープロファイルを適用した画像。
 高い彩度の画面に対してSpyder X Proで調整を行った結果、パソコンが出力する彩度を抑える事になるので、Bandicamでキャプチャーして他の環境で表示すると、下のWindows10フォトの写真は上のGoogle Chromeとは相対的にくすんだ様に表示されます。

 Dell U2413とSpyder X Proを色々試した所、U2413のカラープリセットを色空間sRGBに設定した上で、Sypder X Proで調整すれば、ChromeとWindows10フォトと一致はしない物の、乖離が小さく、実用上も問題ない感じにはなりました。

 U2413の色空間sRGB設定ではSpyder X Proによる調整が色温度6500Kよりも小さい為だと思います。

 Spyder X Proで調整した後の判定では色温度6500K設定では100%だったsRGBが色空間sRGBで設定すると94%と判定されていたので、難点はある様です。

Windows10上での2つの大きな問題点

 Windows10でSpyder X Proを使う際に2つの大きな問題に気付きました。

 1つ目の問題はWindows10上ではデュアルディスプレイでクローン表示した際は、2つのディスプレイに1つのディスプレイのカラープロファイルが強制的に適用されて、カラープロファイルを任意に変更する事も出来ない問題があります。

 上の画像は「アイ・オー・データ GV-HDRECを買った」と「アイ・オー・データ GV-HDREC その2」で紹介したI/OデータGV-RECを経由して接続したPortkeys PT5にCintiq16の画面を複製表示した際のディスプレイのプロパティです。
 クローン表示している2と3のディスプレイのカラープロファイルはCintiq16用のカラープロファイルが適用された状態でグレーアウトして、任意に変更する事が出来ません。

 ディスプレイの詳細設定を表示すると、Windows10は個々のディスプレイを認識しているのは確認出来ます。
 この項目ではリフレッシュレートだけしか変更出来ず、個々のディスプレイにカラープロファイルを適用する事は出来ない様です。

 この問題の解決方法は今の所見付かっていません。

 2つ目の問題は、マルチモニターの構成を変更すると、モニターのプロパティ画面上では適用されているセカンダリーモニターとして使用しているCintiq16のカラープロファイルが、実際には適用されなくなる事がある問題です。

 ルチモニターの構成を変更してセカンダリーモニターとして使用しているCintiq16のカラープロファイルが適用できなくなった場合は、Spyder X Proのソフトを立ち上げて、Cintiq16の画面上で操作する段階まで進めてからソフトを終了すれば、Cintiq16にプロパティ上で表示されているカラープロファイルが正常に適用される事が分かり、面倒では有りますが、一応の解決は可能となりました。

 これら2つの問題はWindows10の制約なのか、私の環境独特のバグ的な物なのかは分かりません。

Spyder X Proの限界

 ワコム Cintiq16は出荷時からそうなのか、経年で黄変したのかは分かりませんが、Dell U2413と比較すると、未調整の段階ではやや黄色っぽく、Spyder X Proで調整した後も、Cintiq16の方がU2413に比べてやや黄色っぽい傾向はそのままでした。

 ワコム Cintiq16の様な液晶ペンタブレットとDell U2413の様な単なるモニターとでは構造が異なりますし、ディスプレイ部分の表示方式や材質等の差も発色には影響するでしょう。見る角度による色の差が小さいと言われているIPS液晶でも見る角度や室内の照明の当たり方で見える色味は結構変わります。それらの差をカラープロファイルで埋める事は不可能です。

 Spyder X Proは、異なるディスプレイ製品同士だと、ぱっと見で大体同じ風に見える様にするのが限界だとは思いますが、それでも十分に機能していてないよりはずっとマシです。

SpyderX Pro用ソフトに希望する機能

 輝度の調整同様に、色味もモニターのハードウエア上の調整機能を使って可能な範囲で調整できる機能があれば良いと思いました。

SpyderX Proで調整したその後

 SpyderX Proの導入で今まで出来なかった事がが出来る様になったりはしませんが、ZBrushの表示色が液タブとモニターで色が同じ様に見えるのには感動しました。

 気分的な物かも知れませんが、ZBrushの表示が見易くもなりました。

 Cintiq 16とU2413のどちらの色が正しいのかで悩む事も無くなりました。

 Portkeys PT5との色合わせも以前よりもやりやすくなった様に思います。

まとめ

 色にシビアな仕事をしている方ならSpyder X Proよりもグレードの高いディスプレイの色校正用の機材を既に利用されている様に思います。

 Spyder X Proのターゲットは、恐らく、アマチュアや、色がそれ程シビアに問われない仕事向けだと思います。

 私にとってのSpyder X Proはデュアルディスプレイ時のストレスがかなり軽減されたので十分に価値は有りました。

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