自作真空脱泡機を自動化した

 2020年の10月から12月にかけて自作真空脱泡機を更新したのは、レジンキャスト複製時に、真空脱泡機の真空ポンプを作動させてからの操作を自動化したい事か切っ掛けでした。

 レジンキャスト複製で真空脱泡機を使う時の工程は下記の様な感じです。

1 レジンを投入したシリコーン型を真空槽に入れる。
2 蓋をはめて真空ポンプの電源を入れる。
3 蓋が密封される様に抑える。
4 十分な真空度になるまで待つ。
5 十分な真空槽に達してから任意の時間に設定したキッチンタイマーをON。
6 キッチンタイマーが鳴るまで待つ
7 キッチンタイマーが鳴ったら真空ポンプの電源を切り、ボールバルブを半開きにする。
8 真空計の針が0.05を指すまで監視しながら待つ。
9 真空計の針が0.05を差した所でボールバルブを全開放。
10 キッチンタイマーのストップウォッチ機能で真空脱泡終了からの経過時間を計測開始。

 2から9までの間が2分程度だと思うのですが、この間に真空脱泡機から離れ、その間にレジンが硬化してしまうと、気泡を無数に含んだ成型品が出来上がってしまい、時間も材料も無駄になってしまいます。
 これでは宅急便や郵便が来ても出る事が出来ません。

 10の真空脱泡終了時刻を記録し忘れて、確実に硬化するのを待つのに、余分に時間を取る事かしばしばありました。

 これらの問題を前々から解決したかったので、今回、真空ポンプが作動してら終了時間の記録までを自動化しました。

 自動化する方法は無数に選択肢がある中で、今回はArduinoと4チャンネルリレー、2つの真空電磁弁、アナログ出力付きデジタル真空計で実現しました。

 制御は当初からワンボードコンピューターを使う事を決めていました。
 先ずはラズベリーパイを調べてみたのですが、ラズベリーパイは元々安価なパソコンを作る為に開発された物なので、機械を制御するには別売品が色々と必要で、ソフトウエアも複雑になる様です。
 デジタル真空計のアナログ信号を読み取りだけでも、ラズベリーパイで行うのには、デジタル真空計の費用とは別に、ラスベリーパイと、社外品の信号読み取り装置で1万円以上掛かりそうでした。

 Arduino Unoだと1024段階でアナログ信号の読み取りが標準で行え、価格もArduino Unoだと1000円台前半で、プログラミングも比較的簡単そうだったので、Arduinoで作る事にしました。

 Arduinoの基本的な使い方を学習したかったので、3000円台で売られているスターターキットをアマゾンで購入しました。

 デジタル真空計はSMC ZSE30A-01-C-MLを使用しました。
 SMCの製品は昔から使って気に入っていたのと、アナログ出力のあるデジタル真空計としては比較的安価なのが選定理由です。

 開放弁は閉鎖、半開放、全開放の3パターンがあれば済むので、真空電磁弁を2つ使って閉鎖と2種類の開放動作を行う事にしました。
 真空電磁弁はコガネイV200を利用する事をかなり早い段階で決めていました。
 真空電磁弁としては比較的安価で、小型軽量、手動でも弁の操作が出来るのが決め手でした。
 偶々安く手に入ったV200がDC24V仕様の物だったので、DC24VのACアダプターから給電して、DC12V~24Vに対応する真空計の電源と共有する事にしました。
 コガネイV200は、閉鎖と開放だけでなく、空気の流れるポートを切り替える事も出来る製品なので、閉鎖と開放だけしかできない真空電磁弁に比べると、構成をコンパクトにする事が出来ました。

 通常であれば、V200はAC100V仕様の方が安価なのと、真空ポンプと同じ電源を使えば配線が簡略化出来るので、DC24V仕様のV200が安く入手できる機会が無ければ、AC100V仕様のV200を使い、デジタル真空計は小さいDC12VのACアダプターを使っていたと思います。

 大気開放の弁部分は、カプラージョイントでボールバルブの手動式と交換できる様にしました。

 新古品のV200E1 DC24Vと中古品のV200E1 DC24V SRが思いがけなく安く入手できたのですが、V200E1 DC24Vと併設で接続したパイロットランプのLEDが不規則に点灯不良を起こしたり、Arduinoがリセットされたりと不具合があったので調べてみたら、V200E1 DC24Vはフリーホールダイオード(メーカー表記ではフライホールダイオード)が内蔵されていない製品で、真空電磁弁も電気的にはモーターの一種らしく、サージ対策なしでは、V200E1 DC24Vへの給電を止めた時に問題が発生する様です。
 サージ対策として、Arduinoのスターターキットに入っていたダイオードをフリーホールダイオードとして機能する様に内蔵した延長ケーブルを取り付けました。
 ダイオード内蔵延長ケーブルを使う様になってからは不具合は解消されました。又、V200E1 DC24Vのケーブルの長さが微妙に足りない問題も同時に解決しました。

 AC100VやAC200Vで動作するV200は全てのモデルに、サージ対策としてフライホイールダイオードが内蔵されいる様です。

 真空ポンプと真空電磁弁の電源のON/OFFはアマゾンで購入したELEGOOのArduino用4チャンネルリレーで行っています。
 安価なものですが、性能的には十分な物でした。
 コントロールボックスの中に入っているのは、上の写真の様にArduinoとリレースイッチの基板2枚と、外部の端子やスイッチとを繋ぐ配線コードのみです。

 一番難航したのは筐体で、幾つもケースを買う事になりました。

 内部はArdunio UNOとリレーと配線だけなのですが、端子やスイッチが結構な量になってしまいました。

 AC100Vの入力 1
 DC24V ACアダプター用と予備にスイッチングしないAC100V出力 2
 真空ポンプの為にスイッチングするAC100V 1
 ACアダプターからのDC24V入力 1
 スイッチングするDC24V出力 3
 デジタル真空計用DIN5ピンコネクター 1
 リレーをキャンセルしてDC24Vを強制出力出来る押しボタンスイッチ 3
 DC24Vの出力状態を確認出来るパイロットランプ 3
 Arduinoの動作状況を確認する為の赤色LED 1
 ボタンの待機状態と動作状態を表示する青色LED 1
 ボタン入力用ミニピンジャック 1

 合計18個の部品をケースに取り付ける事になってしまいました。
 これらが収まるケースが見つかるまでに結構な時間と費用を費やしました。

 今考えると、真空脱泡機は据え置きで使うので、無理にプラスチック製のケースに収める必要は無く、オープンフレームなどの別の方法でも良かった様に思えます。

 ソフトも自作となりました。
 Arduinoのプログラミングは全くの未経験だったので、リファレンスに目を通して記述方法や、制約などを理解する事から始めたので、当初は手間取りましたが、実作業日数で1週間程度で目的の動作を行うプログラムが完成しました。
 5日程度で概ね出来上がり、残り2日で実機での動作確認と、動作確認で顕在化した問題の対応と言った感じです。

 アルミ寸胴で作った真空槽ではデジタル真空計が-97kPaを表示している時点でアナログ出力は4.9V程度と比較的正確なものの、木材で自作した真空槽だと、原因は良く分からないのですが、デジタル真空計が-90kPaを表示している時点でアナログ出力の電圧が最大値の5Vに達してしまうので、真空ポンプを回し続ける時間を増やしたり、常圧付近は電圧が多少ブレる様なので、開放していた真空電磁弁を閉鎖するまでに待ち時間を設けたりと言った具合に、使用状況に応じた修正が主でした。

 ArduinoのRAM容量はが32KBなので、液晶画面に凝った装飾を施したUIを表示したりする余裕は無さそうです。

 Arduino IDEのシリアル出力表示で、真空脱泡終了時からの経過時間を過去5回まで表示できる様にしました。
 Arduinoにはプログラム開始からの経過時間の計測は出来ても、現在時刻を確認出来る時計は内蔵していないので、当初不便に感じましたがArduino IDEのシリアル表示はタイムスタンプ機能があるのでもし何かの具合でArduinoが止まっても、Arduino IDEのシリアル表示側で終了時間を確認出来ます。

 現状でも、真空脱泡終了時からの時間表示をしないのであれば、パソコンなしで真空脱泡機の制御は可能です。
 真空脱泡機の制御に使っているArduinoに、液晶などの表示機能や時計機能を持たせるのはピン数の都合もあって現実的ではありませんが、真空脱泡機を制御するArduinoから、液晶表示と時計機能を搭載したArduinoやポケコンみたいな別の機器に信号を送り、信号を受信した機器が信号の受信時刻や経過時間を表示するものなら、比較的簡単にできそうですし、大きめの筐体なら一体化も出来ると思います。
 ただ、私の真空脱泡機の使用環境では、すぐそばにデスクトップパソコンがあるので、長めのUSBケーブルでパソコンと真空脱泡機を制御するArduinoを繋ぎ、パソコンのArduino IDEでシリアル表示するのが、費用も掛からず簡単でした。

 Arduino IDEが動くなら、タブレットやノートパソコンを使うのも良いと考えてSurfacePro3でArduino IDEを試してみた所、Arduino IDEが動いている間は常にファンが高回転するので、Windows用のArduino IDEは負荷が高い様です。
 据え置きでWindows用Arduino IDEを利用するのであれば、冷却に余裕のあるデスクトップパソコンで利用するのが良さそうです。

 Arduinoへの入力には、30mmの穴があれば取り付けられ、耐久性も高く、交換も容易な業務用ゲーム機に使われるサンワの押しボタン防塵防滴のABS製ケースに取り付けて使っています。
 Arduinoにはプルアップスイッチが内蔵されているので、スイッチは、抵抗などを使わずとも、Arudinoのデジタル端子とGND端子に配線するだけで機能させる事が出来ます。
 コントロールボックスには3.5mmのモノラルミニピンジャックで接続しています。

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 当初はアマゾンで販売している中では一番安いグレーのボタンを使っていました。

 リレーの端子への接続には、アマゾンで購入した小さい絶縁皮膜付きの棒端子を使いました。
 使い方がこれで正しいのかは分かりませんが、皮膜を剥いだ導線を差し込むよりは、簡単に、確実に配線できる様になりました。

 Arduinoとリレーの接続や、LEDランプ等の配線の端子にはアマゾンで購入したQIコネクタのセットを使いました。
 0.3sqくらいまでの細線しか使えないものの、圧着のみで端子以外を絶縁できるので、手軽ですし、着脱が簡単な割に、言われている程は簡単には抜けないので、気に入っています。
 専用工具で圧着する物みたいなのですが、私は利用頻度が高くないので、ラジオペンチで圧着しています。

 真空脱泡機の動作確認の様子の動画をYoutubeに投稿しいます。

 Arduinoのプログラムが起動すると赤色LEDが点灯する様にしました。

 ノイズによりボタンが押されたとArduinoが判定したり、間違ってボタンをおして、不意に真空ポンプが動作しない様に、ボタンを0.6秒以内に3回押すと青色LEDが点灯し、その状態で、0.5秒以上押し続けると、真空ポンプが動作する様にしました。

 真空ポンプや真空電磁弁が動作中には、青色LEDが1秒のサイクルで点滅する様にしました。

 真空ポンプが動作していたり、真空電磁弁が半開放の動作をしている間に、0.6秒以内にポンタを3回押すと、真空ポンプが動作中なら真空ポンプを停止させ、真空電磁弁が全開放動作する、緊急停止機能も実装しています。

 10月初旬から何度も思い描いていた物が、ほぼそのまま出来たせいか、完成した時の感慨みたいなのは有りませんでした。
 ボタン1つで真空ポンプを動かしてからは、全て機械任せに出来るので、真空脱泡中に他のシリコーン型のクランプを行なったり、部品の揃ったキットをパッケージングしたりと言った別の事が行える様になったので、レジンキャストキットの生産がかなり楽になるとは思うのですが、実際にキットを量産する機会が年明け以降になると思うので、利便性を実感できる段階にはまだありません。
 利用した時の感想などは後日掲載したいと思います。

 自動化に伴う費用の総額は4万円程度でした。
 工具の追加はラジオペンチくらいで、後は部品類です。そのうち1/3程度は試しに買った未使用の部品でした。ケースや端子類は色々種類があり、実物で確認しないと分からない事も有るので、れは仕方ない所ですね。
 今回、真空電磁弁は新古品と中古品を安く買ったので、新品で揃えるとなると、無駄を抑えても4万円程度してしまうと思いますが、私と同様に、真空脱泡機の手動制御に不満があるなら試してみてはいかがでしょうか?

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