真空槽を木材で自作しました

 自作真空脱泡機に使う真空槽(真空チャンバー)を、2020年10月から12月にかけて木材で自作しました。

 以前から、レジンキャスト複製用に27cmの寸胴から自作した真空槽と、シリコーン型製作用に中古購入した既製品のアクリル製真空槽を使っていました。

 どちらも中に入れられる寸法に不満があったのと、木材とアクリル板で真空槽が作れるみたいなので、自分も作ってみる事にしました。

 コーナンで24mm厚の板を購入して、内寸の幅と奥行きが35cm、高さが28cmの升状になる様に、カットサービスで切り出して貰いました。

 升状に組み立てた際の接合部分には、シーリングになる事を期待してゴムシートを貼りビス止めで仮組してみました。

 解放時に空気を入れる穴は、「真空ポンプの排気用オイルフィルターを交換した」で紹介した様に、11mmのドリルと1/4PTのタップで1/4PTのネジ穴をあけ、1/4PTオスのカプラージョイントを取り付けています。

 真空ポンプに接続す吸気口はエドワーズ油回転真空ポンプRV12に合わせて、位置決めを行ないました。

 吸気口はNW25の内径を生かしたかったので、真空槽の側面に29mmのホルソーと1PTのタップを使って1PTのネジ穴を開け、NW25-1PTオスネジアダプターを取り付けられる様にしました。
 1PTのタップは高価で、対応するタップハンドルも安価とは言えない物なので、中古品をネット通販などで購入しました。

 ビス止めでの仮組状態で、手持ちのアクリル板と、スポンジゴムのシートで蓋をして、1/4PTのネジ穴を取り付けたカプラーソケットに接続した真空ポンプでテストしてみた所、組立精度の問題から、ゴムシートだけでは期待したほどの密封効果は無く、あちこちで密封漏れするので、接合部分は半透明のガンタイプのシリコーンコーキングを塗布してから、組み立てる事にしました。

 組立時の接合部分にシリコーンコーキングを塗布して、木材を組み立て、気密を高める為に、木の箱の外側にゴムシートをエポキシ接着剤で外張りして、NW25-1PTアダプターと、1/4PTオスネジの付いたカプラーソケット取り付けて、真空ポンプでテストを繰り返した所、ビスかビス穴が耐えられず、箱が変形してしまいました。
 木の板の変形ではなく、ビスかビス穴が変形した様です。
 色々検討して、内側に板を2枚配置して、内側に入り込もうとする外板を垂直に支える構造にした所、それ以降、変形は起こらなくなりました。
 板を内側に取り付けた際に、大気開放時の空気導入口になるネジ穴が塞がってしまうので、穴を塞ぐ部分は彫刻刀の平刀で削っておきました。

 真空槽の蓋にはアクリルショップはざいやで注文した、40cm四方で角を丸く落とした20mmのアクリル板を使っています。

 アクリル板の重量は3kg以上ある為、何度も上げ下げするのは大変なので、ヒンジで真空槽に固定して、ロック機構付きのハンドルで片手で開閉できる様にしました。
 ロック機構は今まで使っていた真空槽の形式だと、常圧に戻した時に動かしにくいので、異なる形式のハンドルにしたいと探していた所、アマゾンで丁度良い物が売られていたのでこれを使いました。

 アクリル板を開けた時の位置は、角材を切り出したブロックで調整しました。

 ヒンジとハンドルは、レジンによる汚れが酷くなった時に交換できる様、アクリル板にタップでネジ穴を開けて、ビス固定としました。

 ハンドルのロック部分のラッチの位置が高過ぎるとロックしただけでは十分に密閉できず、低すぎるとロックできずとシビアだったので、位置調整に苦労しました。
 ラッチの高さは、ラッチを固定する角材の厚みで調整しました。

 角材はレジン固着しない様に、

 蓋の気密は10mm厚のゴムスポンジシートを切り出し、簡単に外せる様に、シリコンコーキングで貼り付けています。
 切り出しがそれ程綺麗に出来ませんでしたが、実用上は問題ありませんでした。

 レジンキャスト複製の様に出来るだけ早く到達真空度を得たい場合、真空槽内に物を詰めて体積を小さくする事で、到達真空度までの時間を短くする事が出来ます。
 真空槽が角型の場合、寸胴を使った円柱状の真空槽内に比べて、詰め物を用意するのが簡単です。これは私が角型の真空槽が欲しかった理由の一つでもあります。

 安価な発泡スチロールでも真空槽内の詰め物に十分使えるのをテストにより確認したので、真空槽に適した形状に切り出した発泡スチロールをエースクロスで覆いました。

 発泡スチロールの切り出しには何年か前に買ったテーブルタイプの発泡スチロールカッターを使いました。
 あまり使う機会はないものの、切れ味が悪く、収納時にも嵩張るので、
アマゾンで売られている様な物が欲しいと思いました。

 真空槽の内側の側面にはアクリルショップはざいやで購入したPP板をスーパーXハイパーワイドで貼り付けていましたが、追加した板の分までは無かったので、レジンの付着防止には、100mm幅の養生テープを貼っておきました。

 アマゾンで購入したゴム足をビス止めして、予定していた全ての工程が完了。

 ゴム足を側面に付けたのは、前開きで使える様にする為です。

  木の板を組み立てる時に使った、コーキングガン用のコーナンオリジナルのシリコーンコーキングは、チューブの中まで硬化が進み使えなくなっていたので、ネジ穴に取り付けたNW25-1PTアダプターと1/4PTオスのワンタッチカプラーソケットの根本には、パスポンドQを塗布しておきました。

 バスポンドQは割高な物のガン用に比べると保存が利くので、少量を繰り返し使う場合には便利です。

 PP板を張り付ける為に買ったスーパーXハイパーワイドを、真空槽の内側の底板に1mm厚のゴムシートを貼り付ける時にも使ってみたのですが、粘度が高くあまり伸びないので、ゴムを貼った後の位置調整が出来ないのと、接着剤の凹凸でゴムシートが波打ってしまうので、薄いゴム板の貼り付けには向いていない様でした。
 PP素材の接着にしか使えないと感じました。その内張りにしても、養生テープで良い気はしました。

 真空槽の外側にゴムシートを貼る時にはボンドEセットを使ってみました。
 模型用では5分硬化型や10分硬化型が良く使われますが、硬化時間が早いエポキシ接着剤は、実用品に対しては耐久性の点で難があるとの事なので、90分硬化型を使ってみました。
 位置決めしてから半日くらいしっかり固定しておく必要はありますが、ゴムシートを貼り付けてから位置決めするのにも十分な時間が取れ、伸びも良く貼り付けたゴムシートの波打ちも抑えられ、不要な部分に付着した接着剤は硬化前ならエナメル溶剤で拭き取れ、硬化後も素材によっては簡単に剥がせるので、ゴムシートの貼り付け方法としてはこれが最適解だと思います。
 ただ、外張りはエースクロスを貼り付けた方が、安価で簡単だったと思います。

 ビス止めや穴開けは、主に、アマゾンで購入した、マキタの六角ビット対応のドリルドライバーを使っています。
 六角ビットでないドリルには日立のDW15Vを使っています。
 DW15Vは大袈裟なので、マキタのDF330DWSPが欲しいと思っています。

 ドリル穴が傾き過ぎない様に、SK11のドリルガイドを使っています。
 ボール盤の様な精密さは有りませんが、極端に傾いていなければ問題無いので、DIYで使うにはこれで十分だと思います。

 木の板を組み立てる為のビス穴を開ける時には、コーナークランプを使っています。
 画像の物はホームセンターで買ったプラスチック製の安物ですが、かなりしなるので、同じ様に安物でも金属製の方が良いと思います。
 2個だと不便な時があるので、4個あった方が良いですね。

 木材はホームセンターでカット出来るのですが、細かい物の切り出しや、微調整は木材カットコーナーのパネルソーでは難しいので、そう言った用途に、クランプ用の板を切り出すために2年前に中古購入した、マキタのスライド丸ノコを使っています。
 マキタのスライド丸ノコは30cmくらいまでの幅にしか対応してないので、それを超える長さの板の幅を詰めたい場合は、ホームセンターの木材カットコーナーを利用するか、丸鋸を使っています。

 木材で作った真空槽は、素材の問題なのか、工作精度の問題なのか、寸胴で自作した真空槽よりもリークはするものの、真空ポンプを回し続ける分には実用的な密封性は確保できました。
 耐久性に付いては、実際に使ってみないと分かりませんが、その機会は来年になりそうです。

 内寸28cmの深さは真空ポンプの高さにあわせて算出した物なので、減圧時間を短縮したい場合は、板などの詰め物で底上げするのが良いと思います。
 深い方が蓋のアクリル板にレジンが付着するのを抑えるられるので、状況に応じて使い分ければ良いと思います。

 費用は新たに購入した工具や、未使用の材料を含めると6万円以上、使用した材料だけで4万円以上しました。
 同程度の角型の内寸を得られる既製品よりはずっと安いのと、費用が嵩んだ要因は、1PTのタップとタップハンドル、ゴムシートとその接着剤、未使用の材料なので、ネジ穴は1/4PTや3/8PTで開け、外張りはエースクロス、内張りは養生テープで行えば、工具含めて3万円くらいには収まると思うので、寸胴を使った自作真空槽に代わる選択肢になり得ると思います。

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